マインドフル・ライフスタイルメディア「Mindful.jp」
「読む」をマインドフルに--言葉の美しさを味わいつくす-柏原里美-
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「読む」をマインドフルに--言葉の美しさを味わいつくす-柏原里美-

マインドフル・ライフスタイルメディア「Mindful.jp」

この記事は、12/1〜25まで、毎日1人ずつマインドフルネスを実践している方が「私の日常にあるマインドフルネス」をテーマにリレー形式で綴る、マインドフルネス・アドベントカレンダー2021の記事です。
その他のマインドフルネス・アドベントカレンダーの記事はこちら

アドベントカレンダーも、2021年も、フィナーレに向けたカウントダウンが聞こえてきそうな今日この頃。今年もまた、マインドフルに紡がれた文章のバトンの一端を担えることを、とても嬉しく思っています。

こんにちは。柏原里美です。
昨年のアドベントカレンダーでは、こんな記事をじっくり書かせていただきました。
https://mindful.jp/n/n416f498bd8f7

今年のテーマは「日常のマインドフルネス」。
等身大の私として、感じていること、取り組んでいることを書いてみます。

*なお「日常」ではなく非日常のマインドフルネスとして、今年9月に参加したヴィパッサナー瞑想体験記を書きました。よろしければこちらもどうぞ。

編集者なのに……「文章が読めない!」

「マインドフルネス」と出会ったのは2014年。後に『世界のトップエリートが実践する集中力の鍛え方 〜ハーバード、Google、Facebookが取りくむマインドフルネス入門〜』として世に出ることになる本の企画の情報収集をしていた時のことでした。この本は、ありがたいことに、初の“国産マインドフルネス本“として発売され、感度の高い方々にお読みいただいてきました。

……と書くと、「ブームに先駆けて本をつくりました」「私すごいでしょ」という話に聞こえるかもしれないけれど、まるで違います!!
あまり人に言ったことはありませんでしたが、この本は「集中力がない…」と困り果てていた自分自身のためにつくった本です。そして、そんな困り果てた私を救ってくれた恩人でもあるのです。

7年前、33歳だった頃の私は、あることに悩んでいました。

文章が読めない!
しっかり読んでいるつもりなのに、全然頭に入ってこない…!!

これは編集者にとっては、致命的。
元々、活字を読むことがとても好きだったはずなのに、、、

読むのがしんどくても、新たな原稿、本、資料……と、読まなければいけないものは次から次へと現れます。藁にもすがる思いで試した速読はうまくいかず、結局は土日を使って何とかつじつまを合わせる……そんな日々を過ごしていました。

今なら、よくわかります。
ヘトヘトに疲れ果てていて「読んで理解する」だけのエネルギーがなくなっていたとんでしょう。
でも、ふしぎなことに、本当に苦しい時は「自分が疲れていること」を認められなくなってしまうのです。
当たり前を当たり前と認めることができなくなるのが「疲労」の怖さ…。「休んだほうがいいよ」と言われて「そんなこと言われたって休めないんだよ!」と少しイラッと感じる時こそ「休むべき時」だということを忘れないでくださいね。
(まわりにそういう人がいたら、そっと手を差し伸べてあげて欲しいです)
*本当は怖い「疲労」の話、詳しく知りたい方はこちらがお勧めです

元の話題に戻ると、私は「読めないのは集中力がないからだ」と考えました。よく聞くけれど正体がいまいちつかめなかった「集中力」を鍛える方法を調べていく中で出会ったのがマインドフルネス

大学時代、瞑想と出会っていたおかげで、その効果がどれほど強力かはわかっていました。とはいえ、瞑想の実践って結構大変です。私も何度挑戦しては、挫折したことか……
でも、マインドフルネスは、本当にシンプル

「食べる瞑想、聞く瞑想、歩く瞑想、書く瞑想…こういう方法でもいいんだ!」

調べれば調べるほど「これは私の悩みを解決するだけではもったいない。これは今こそ本として世に出すべきものだ」という思いが強くなっていき、「本をつくりませんか?」とMiLIさんにメールをお送りした--これがとても個人的な、本が出来上がる以前の編集秘話です。

マインドフルネスの効果は、本をつくりながら体感しました。「とにかく1日数分でもいいからマインドフルネス瞑想を取り入れよう」と心に決め、最初に始めた場所はお手洗いの中。トイレ休憩の数分間は、目を閉じて呼吸に意識を向ける時間にしたのです。
その後、電車の中、お風呂の中と少しずつ場所が時間を増やしていく中で、気づけば「読んでも頭に入ってこない」と悩むことが、ほとんどなくなっていました。
それどころか、、、ある時、こんなことに気づいたのです。
「ちょっと変えるだけで、私を悩ませていた“読むこと“をマインドフルにできる」
以下では、私が実際にやっている「読む」マインドフルネス、少しかっこつけて名前をつけた「mindful reading style」を、3つご紹介します。

mindful reading style --「読む」をマインドフルに

1:読む「姿勢」「場所」を変えてみる

私は、何かしらを読む時は
・姿勢
・場所

を頻繁に変えてます。
ふつうに座って読んだ後は、スタンディングデスクを使って立って読む。部屋の中を歩きならが読む(二宮金次郎スタイル)。立つのに疲れたら、バランスボールの上に座って読む。それでも疲れたらバランスボールに背中を預けて仰け反って読む。

もしくは天気がいい日は、外で本を読むこともしばしば。
ふしぎなもので、姿勢・場所を頻繁に変えると、集中が途切れづらくなります。

木に寄りかかって読むのが近頃のお気に入り。今の季節は落ち葉がフカフカで気持ちいい^ ^

さらにもっとふしぎなのは、読む場所によって、書かれていることから受け取れるメッセージが変わってくるということ。
私の場合は、部屋の中にいると「書かれていることが本当に筋が通ったものかどうか」に、外で読んでいると、もっと感覚的・感情的なことに気づきやすくなります。場所によって、活性化させる脳の部位が違うのかもしれません。

外で読むと難しい本が”腑に落ちる”ことがあります
(理解はできないけど「わかった気」がする←これは大事な感覚だと思います)

「読む=机に座って、じっとしていなければならない」
いつからだろうか、私はそう思い込まされていました。
でも、誰がそんなことを決めたのでしょう?

じっとしてれば、誰だって疲れます。飽きてきます。眠くもなります。
でも「飽きた」「眠くなった」は脳が感じる疲労の最初のサイン
見逃さずに、すぐに姿勢・場所を変えてリフレッシュするほうが、よほど合理的です。

2:「音」を味わうように読む

もう一つ、私がとても好きなのは「音」を味わう読み方。
オーディオブックや読み上げ機能を使うのもいいのだけど、私は「自分の声で言葉を音として出してみる」のが好きです。これは、いわゆる音読のこと。

・音読中は「前頭前野」が活性化し、アイデアが浮かびやすくなる
・音読後の記憶力は20〜30%アップする
・音読にはリラックス効果がある(セロトニン神経に有効らしい)

など、音読には実利的な効果があるのはもちろんのこと、言葉を「音」として味わう時間は、なかなか豊かなものです。

・・・というわけで、ここで、黙読と音読の違いを実際にためしてみませんか?(だまされたと思って)

まず、黙読(声に出すことなく、目で文字を追いながら読む)をしてみてください。特に何かを意識することはなく、いつものように読んでいただければ十分です。

 心は意識しようとしまいと、頭が気づこうと気づかずとも、無意識の中でせっせと何かしらのエネルギーを使い続けている存在なのだ。心を安定化させ、体を安定化させるために、生きているだけで心のエネルギーを消費しているのだ。
 心は常に何らかのエネルギーを必要としている。人間の生命を動かすために、心の中と体の中でエネルギーが必要とされ、相互に行き来しながら、消費されたり供給されたりしている。私たちは食事や水といったエネルギーを摂らないと生きていけないし、生きていくことができない。そのことと同じように、心にもエネルギーが必要なのだ。

『いのちを呼びさますもの』 稲葉俊郎著(P173-174)


この美しい文章は、私の大好きな本の一節です。
(心のエネルギーの充電もお忘れなきように)

さて、もう一度、今度は声に出して、読んでみませんか?(だまされたと思って)
誰に聞かせるためではなくて、自分のために声を出すこと、「音」をたっぷりと味わうことに意識を向けてみるのがオススメです。

 心は意識しようとしまいと、頭が気づこうと気づかずとも、無意識の中でせっせと何かしらのエネルギーを使い続けている存在なのだ。心を安定化させ、体を安定化させるために、生きているだけで心のエネルギーを消費しているのだ。
 心は常に何らかのエネルギーを必要としている。人間の生命を動かすために、心の中と体の中でエネルギーが必要とされ、相互に行き来しながら、消費されたり供給されたりしている。私たちは食事や水といったエネルギーを摂らないと生きていけないし、生きていくことができない。そのことと同じように、心にもエネルギーが必要なのだ。

『いのちを呼びさますもの』 稲葉俊郎著(P173-174)

いかがでしたでしょうか?
感じ方に違いはありましたか?

ちなみに、私の場合は、音として読むと、言葉をより立体的に感じられるような気がします。音という波が、耳から、背骨から、胸から言葉の重みが身体全体に染み込んでくるような感覚がするのです。

私のお気に入りは、お風呂で足湯をしながら声を出して読むこと。
お風呂という閉じられた空間にいると、反響が起こり、より一層「音」を深く味わえるような気がします(足湯もオススメ)。これもまた、だまされたと思って試してみて欲しいです。

羽黒山伏の星野文紘先達は、こんなふうに話していました。

「言葉のもとは音」という話を、特に若い人たちにしているの。「愛してる」だと「好き」だの「結婚してくれ」って言われた時、「その『言葉』を聞くんじゃないよ、『音』を聞きなさい」と。その音を聞いて、感覚的に「あ、この音、あう」と思ったらOK。ちがったらNG。みんな、言葉の内容にだまされるんだよ。言葉は、いくらでも飾り立てられるから
(中略)
人を判断する時は、その人の「音」をとおして、奥にある無意識の判断をしたほうがいい。大事なのは「奥」にあるものなんだよ、すべて。

『野性の力を取り戻せ』P132

「読む」というと、どうしても言葉の意味を受け取ることをイメージしてしまうけれど、「音」「響き」「リズム」として言葉を味わう。たまにはそんな「読む」もいかがでしょうか。
(ちなみに「読む」の語源は「文章を一字ずつ声に出していうこと(唱えること)らしいです)

3:文字の「形」を味わいながら読む

最後にもう一つ。それは、言葉をつくりしている「文字の形」を味わうこと。書き写すことです。
お気に入りのフレーズ、お気に入りの表現を、実際に自分の手で書き出しながら読む。これも、とてもシンプルなのですが、クセになります。

私が大好きな岡本太郎さんは、こんな言葉を残しています。

そもそも字と絵の表現は一体のものだった。
象形文字のいわれや変遷などをたどらなくとも、
無心で楽しんで字を書いていると自然に絵になってしまう
遊ぶ字だ。
そこに生きるよろこびがあふれあがってくる。まさに芸術。

『ドキドキしちゃう 岡本太郎の“書“』(P94)
眺めているだけでマインドフルネスになれる! 岡本太郎さんの書をまとめた本
『ドキドキしちゃう 岡本太郎の“書“』

お気に入りの言葉を書きながら読むって「遊び」であり「絵」を書いているような感覚なのかもしれません。

文字ってもともとは「物の形を点や線で表したもの」からきているというし、漢字の元になった象形文字である「甲骨文字」は「神との対話」のために生まれたとも聞く。
文字の起源は正確にはわからないけれど、きっと、文字の一画一画に意味があって、それを受け継ぎながら使っていると思うと、なんだかロマンのようなものを感じずにはいられません。

文字が生まれた時代から、作者がこの言葉を記した時代、そして今、ここでこの言葉を味わう私たち。時空を超えたバトンリレーに参加するかのように、一画、一画を丁寧に味わうように書いてみる。一画、一画に込められた歴史の重みを味わってみる。
黙読よりもずっと時間はかかるけれど、とても豊かで幸せを感じる時間だなぁと感じています。

書き写した言葉の出典元は下記の通り
・茨木のり子「自分の感受性くらい」『おんなのことば』より
『センス・オブ・ワンダー』レイチェル・カーソン(P 24)

字が下手だろうが、漢字を間違えて書き直していようが、なんだろうが、心地よいなら、楽しいならそれでいい!

個人的には、筆ペンで書くのが近ごろのお気に入りです。絵を書いているみたいでとても楽しいし、字が下手でも、ふしぎとが出ます。
あと、たまには利き手とは逆の手で書くとさらに味が出るし、普段とは違う脳の部位が刺激されるのでオススメです。

「そんな面倒なことはしていられない!」と感じたあなたへ

姿勢を変える、場所を変える、声に出して読んでみる、書きながら読んでみる……そんな面倒なことをしていられないよ!!!

--と、かつての私ならば、思ったことでしょう。
そんな時間があるならば、たくさんの資料を読んで、たくさんのことを知ったほうがいい。だって、次から次へと新しいキーワード/コンセプトが出てくるし、新しい記事、新しい本も出てくる。「知っておかなきゃまずいでしょ」と。

一時間の読書をもってしても和らげることのできない悩みの種に、
私はお目にかかったことがない

これは、フランスの哲学者、モンテスキューの言葉。これはこれで好きなのだけど、私は、最後に一文(太字部分)を付け加えたいです。

一時間の読書をもってしても和らげることのできない悩みの種に、
私はお目にかかったことがない。

でも、一時間の心からの読書すらままらないほど
色んなものに追われている状況こそが、本当に悩むべきことではないか。

私たちは、目まぐるしい時代を生きています。
情報が洪水のように押し寄せて、放っておくと勝手にスピードアップするような装置の上を、ただただ延々と走らされているような、少し(いや、だいぶ)狂った時代を生きている--そう感じずにはいられないような出来事が、世の中を見渡すとたくさんあります。

狂った時代に飲み込まれることなく、もっと人間らしく生きたい--もしそんなふうに思うならば、言葉をもう少していねいに、かみしめるように味わってみませんか?
「もっとたくさん」「もっと早く」の渦に飲み込まれないためにも。

古代ギリシャの時代、図書館の入り口には「魂の癒しの場」と書かれていたそうです。言葉や本は、ずっと昔から、人間が人間らしく生きるために欠かせないものだったのでしょう。

言葉にできないことって、たくさんあります。本当に大切なことは、言葉では言い表せないのなのかもしれません。
だけど、それでも「誰かに伝えたい」「分かち合いたい」「何とか言葉にしよう」と力を尽くしてきた営みの結晶が、すばらしい本だったり、詩だったり、表現なのだろうと感じます。
美しい言葉の土台には愛があふれている
だから、言葉の中にある「美しさ」をたっぷり感じる時間、たっぷり受け取る時間が、私たちの人間らしい力強いエネルギー(いのちの力、野性)を呼び起こしてくれるのかもしれません。

「ちょっと疲れたかもしれない…」と思った時こそ、ほんの少しでも言葉を味わう時間をつくってみてはいかがでしょうか?
美しい言葉たちは、いつでも私たちを応援してくれていますよ。
あとはそれを「受け取るだけ」です。

何はともあれ、2021年も、仕事にプライベートに、ほんとうにお疲れさまでした。一年間がんばったご自分を、どうかたっぷりと労ってあげましょうね。

心からの慈悲を込めて。metta♡
Merry Christmas and a Happy New Year!!

■プロフィール

柏原里美
(かしわばら さとみ)


編集者/ファシリテーター
茨城県行方市出身。
大学卒業後、教育サービス会社での予備校運営、情報誌の企画・編集、新事業開発(通信教育事業の立ち上げ、教材開発)を経て、2011年より日本能率協会マネジメントセンターにて書籍編集に従事。同社出版事業本部出版部長、編集第一部長を歴任。人材育成・組織開発を中心としたビジネス関連書、児童書・教育書の企画・編集に携わる。主な担当書籍に、『インテグラル理論』『世界のトップエリートが実践する集中力の鍛え方』『講師・インストラクターハンドブック』『野性の力を取り戻せ』『実践 シナリオ・プランニング』『人が成長するとは、どういうことか』『オンデマンド・ラーニング』『新版 カミング・バック・トゥ・ライフ』等。来るべきコンテンツ・テーマをいち早く発掘する目利き的存在と評される。
「人・社会の可能性をひらくこと、本質的な成長を支援すること」をテーマに、対話・学びの場づくりの活動も続けている他、自らもボディ、マインド、スピリット、シャドーの探求実践に取り組んでいる。
2021年7月より本業はお休み。神奈川県藤沢市を中心に晴耕雨読と旅の日々。
縄文人をリスペクト。

一般社団法人Integral Vision & Practiceフェロー
アクティブ・ブック・ダイアローグ®️認定ファシリテーター
メンタルタフネス協会 強みアドバイザー
日本プロセスワークセンター 基礎コース修了/実践コース在籍中

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