この連載は、しんいちさんが、会社員として働きながらも、物を減らしリュック1つを背負って、旅するように暮らす日々を綴ります。
▼前回までの記事ピックアップ
vol5:偶然は自分で呼び起こせる!「クランボルツ理論」は本当だった。
vol.11:ミニマリストの僕が続けている暮らしをカラフルにする習慣
ミニマリスト&多拠点生活と相性の良い趣味
ミニマリストの僕の趣味は、ランニングだ。
ランニングは、靴さえあれば何処でも出来るスポーツだから、身軽な多拠点生活と相性がとても良い。
現在、地球1周40,000キロ走破を目標に走り続けている。ランニングについても話したいが、こちらはまた別の機会にしようと思う。
突然走れなくなってしまった。
そんな趣味のランニングが突然、出来なくなった。
在宅勤務中に骨折した。
集中するために正座で作業をしていたら、いつの間にか足が痺れていた。
作業がひと段落して、お手洗いにいこうと立ち上がった瞬間、痺れた足でコントロールが効かず、足の甲から着地してしまった。
「パキッ」と乾いた音がした。
足の小指の骨折だった。
「当たり前にできない」へのストレス
骨折箇所が足だったため、強制的に松葉杖生活がスタートした。
走ることはもちろん、歩くことも満足にできない。
無意識に出来ていたことが、急に出来なくなるのは、苦痛だった。
思い返すとイライラした。
しびれる前に休憩をこまめに取っていたら・・・
痺れがおさまるまで、じっとしていたら・・・
そもそも正座で仕事をしていなければ・・・
色んな「タラレバ」が脳で何度も繰り返された。
苛立ちは「骨折の原因」にあった。
とは言え時間を巻き戻すことはできないので、この状況を打破すべく、過去の骨折経験を振り返ってみることにした。
僕は、2015年の冬にも骨折した。
当時のSNSを読み返すと、この時はApple Musicを使い始め、前向きに乗り越えようとしていた。
過去の骨折を、経緯から細かく思い出していくと、当時との違いに気付いた。
骨折という事象は同じだが、原因が異なっていた。
当時は、トレイルランニングのレース中に転倒して骨折した。
レース中という状況から、骨折を「仕方なかった」と素直に受け入れられた。一方、今回は日常生活での不注意で、自分の行動に納得ができなかった。
この違いが、後悔の念を生み出し、前向きな発想に蓋をしていた。
ヒントは書籍にあった。
さて、どうすれば、この後悔だらけの骨折を受け入れられるのか。
悩んでいた時、書籍「野生の力を取り戻せ」の一節を、ふと思い出した。
キャリア理論のなかにも、「小さな死を迎える」という表現を含む考え方があるんです。「トランジション」という理論なんですけれどね。人生のある局面において、転機というか、移行期を迎える。そこは、今までの自分のアイデンティティがある意味では崩壊して、死んだような、自分を失ったような戸惑いの時間です。それを過ぎていくと、新しい自分としてまた歩みを進めるようになる。これをくり返しながら、人はキャリアを積み重ねていく、という考え方です。
『野生の力を取り戻せ』星野文紘, 渡辺清乃著
目の前に起きた想定外の出来事や、やりきれない出来事も、トランジションの理論を取り入れることで、新しい人生をはじめるきっかけ、と捉える事が出来るかもしれない。
歩けない状況は辛く苦しいが、今はそれを耐える時期。その先には新しい何かがあるかもしれない、と捉えると、明るい兆しが見え始めた。
小さく死んで、また生まれ変わる
「小さな死」つまり、どん底まで落ち込んでいる状況を悲観するのではなく、ただその状況を受け入れる。
その状況から獲得した新しい習慣、価値観で生きることを「生まれ変わる」と言うのであれば、捉え方次第で僕らは何度でも死ぬが、何度でも生まれ変われのだ。
歩けないからこそ見える世界を感じ経験しよう、と決めて生活を始めた。
骨折で見えた、新たな世界
すると、早速新しい発見があった。
タクシーアプリの存在だ。
タクシーは電車やバスと比べて、料金が割高なので、緊急度と重要度の高い用事がない限り、使うことは殆ど無かった。
しかし骨折により、移動に不便を感じるようになってからタクシーを使い始めたのだが、アプリで発行されるクーポンを使えば、2キロ程度までは電車とさほど変わらない。
僕の日常生活での移動手段のひとつに、タクシーが加わったのは新たな発見である。
小さな事かもしれないが新しい人生は、小さく、でも確実にはじまっている。
「旅路」は続く。
プロフィール
しんいち:石井慎一
埼玉県入間市出身。社会人から16年を東京で過ごし、離婚や大阪転勤を機に自分の暮らし方を考えるようになる。現在は会社員として人事系サービス企業で大阪支店長の職を担いつつ、全国に拠点のあるADDressを利用し、「旅するように働く、暮らす」を実現している。
・まなびやアカデミー認定マインドフルネストレーナー
・産業カウンセラー
しんいちさんの多拠点ミニマルライフ・ヒストリー
2018年10月
38歳でバツイチ確定後、シェアハウスに転居。当初持っていたのは、掃除機と電気ケトルと服だけ。
2019年6月
大阪転勤を期に、一人暮らしをスタート。家具・家電などが増える。
2020年4月
緊急事態宣言で在宅勤務になり、快適さを追求したくなり、高城剛氏の「LIFE PACKING」から物を減らすことに興味を持ち、「スーツケース一つで生活する」を目指し始める。
2021年1月
一人暮らしのマンションを手放しCoリビングサービス「Address」を契約。多拠点生活を開始。Addressを利用していない時は、間借りしている大阪のスペースで生活している。現在の所持品はスーツケース2つ分。