「これ以上続けても意味がない」そう思った矢先、問題は私の中にあることに気づく-私とマインドフルネス#2-

この連載は、ドイツに暮らす日本人女性Tomokoさんが、マインドフルネスに出会い、それからどう人生が変わったのかを綴るエッセイです。

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第1回   始まりは娘の過呼吸。「私はひどい母親だった」と涙したあの日

もくじ

瞑想を「上手く」やれば、マインドフルになれば・・・と頑なだったあの頃

ボディスキャン瞑想、静坐瞑想、マインドフルネス・ヨガ…。MBSRコースの課題の何をやっても私には不満しか生まれてこない。クラスの先生が「何かシェアしたいことや質問がある人はいますか?」というと、私の発言は大抵こんな感じだった。

「(ボディスキャンで)左足の指が感じられないんですが、私のやり方に何か問題があるんでしょうか?」

「目を閉じると娘のことと心配な気持ちしか出てこないんですが、どうしたらそれを消せますか?」

「ヨガをしていても娘のことを考えてしまいます。もっとヨガに集中するにはどうしたらいいですか?」

今になって考えると、的外れな質問ばかりだったと思うが、当時は「あるべき姿」ばかりを追い求め、「あるがまま」を観ることできなかった。目を閉じれば浮かんでくる過呼吸の娘の姿や、娘の今後を心配する想い、母親としての失敗を恥じる気持ちがあるのはわかっても、それを直視することも受け止めることもできなかったから、瞑想でそれを消してしまおうと思っていた。

瞑想を「上手く」やれば、マインドフルになれば、苦しい感情など出てこなくなり、私の心は穏やかになり、結果として娘は過呼吸を起こさなくなり、成績もよくなる。そうなれば万々歳だ。全く馬鹿げたことだが、これが当時私がマインドフルネスに期待していたことだった。

こんな期待をしていたから、先生の講義は腑に落ちず、当然ながらMBSRの6週目に入っても私の心は楽にならない。これ以上続けても意味がないと思い始めていた時、6週目と7週目の間に入る1Dayリトリートの最後の最後に気づきがあった。

6時間ひたすら自分の心と向き合う中、ある瞬間、一瞬で気づいたこと

丸一日誰とも口を利かず、自分の心とだけ向き合っていくこと6時間。繰り返し繰り返し、高波のように押し寄せくる不安、怒り、悲しみが止まらない。もう、うんざりだ。お願いだから、もうこれ以上私を苦しめるのは止めてほしい。自分の感情に向かって懇願する中、突然、「この苦しみは『完璧であること(自分が固執している理想)』を手放してしまえば消えるのだ」ということに気がついた。同時に、理想(今ここにないこと)ばかりにフォーカスして、今ここにある幸せを全く感じずに生きてきたことにも気づいた。 あれは一種の閃きだったのか何だったのか、今でもよくわからない。ただ、あの瞬間、一瞬でそれに気づいたのだった。

不完全な娘で善し、不完全な私で善し。私がそう思うことができれば、娘が留年しようが転校しようが、私が「育児でコケた母親」というレッテルを貼られようが、痛くも痒くもないのだ。苦しみの原因は娘ではなく、私の中にあることに気づいた瞬間だった。マインドフルネス的に言うと、Autopilot(自動操縦状態・簡単に言うと頭の中の思い込みの世界)にはまり、その状態からひたすら反応している自分にやっと気づいた、ということだ。自分の思い込みを通して世界を見、娘を見、私を見るから苦しいのだ。

原因は私の中にある。

何度も何度もしつこく私に迫ってきた感情が教えたかったことはこのことだった。やっと、わかった。娘の優しい心根や、明るい笑顔、私への細やかな気遣い、私に何を言われようと、ひたすら私を愛そうとしているその姿。自動操縦状態にどっぷりと浸かり、私は今まで彼女の持つ美しさをどれだけ見逃してきたのだろう。私は今までどれほど彼女を傷つけ、私自身を苦しめてきたのだろう。涙が止まらなかった。 泣いている私に、「何かとても大切なことに気づいた時、人は涙を流すものです」と優しく言ってくれた、J先生の穏やかな声を今でも覚えている。

(次回に続く)

■著者プロフィール:Tomoko

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Tomoko
1990年からドイツ在住。子供のプレ思春期時に子育てに大きくつまずいたのをきっかけにマインドフルネスに出会い、子供と自分の心を救いたい一心で藁をもつかむ気持ちで学び始める。学んでいく中、マインドフルネスの力が「集中力アップ」「リラックス効果」「ストレス低減」にとどまらず、生き方さえ変える力を持つことを体験。現在はドイツMBSR/MBCT協会認定MBSR(マインドフルネス・ストレス低減法)講師(※)として、オンライン講座等を通してマインドフルネスを少しでも多くの人に伝えるべく、活動中。
※2021年10月正式認定予定。

HP : https://tomoko-dziuba.com/

※ヘッダー画像は研修所の様子

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