潮風に立つ男は、別の顔を持つ。-三宅弘晃-

「写真を撮る」という行為は「今ここ」を感じて切り取る、マインドフルネスな行為。この連載では、そんなふうにマインドフルネスに生み出された写真とその写真にまつわるストーリーをご紹介しています。

 冬も間近に迫った湘南・鵠沼海岸。加藤亮介さんはひとしきり波乗りを終えると、精悍な笑顔を僕に向けた。鍛え上げられた筋肉はオーダーメイドの黒いウエットスーツでぴたりと包み込まれている。その表面を滴り落ちる潮水は西日によって照らされ、その姿はまるで光の輪郭で切り取られているようだった。

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 僕は、加藤さんが経営する「ななみ整骨院」の取材に訪れていた。湘南に4つの院を構えるななみ整骨院は、地元の方に愛されるだけでなく世界で活躍するようなプロのサーファーが数多く訪れていることも特徴のひとつだ。

 白衣をまとった加藤さんは真剣なまなざしで未来を語る。「柔道整復師から医療を変えたい」。その姿は、まぎれもなく医療の道を独自の視点で追求してきた経営者の姿だった。

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 30年以上サーフィンに親しんできた加藤さんは、流石に海が似合う。そもそも「ななみ整骨院」という名も「7つの海」に由来するらしい。
 取材を続けるうち、ウエットスーツと白衣のどちらが真の姿かなどといった疑問は、それ自体がまったくの無意味であるという結論にたどり着いた。

 波打ち際で空を見上げる姿をファインダー越しに眺めながら、僕は加藤さんがまとう熱量の正体を感じた。波に挑み、医療に挑む。どちらも本気で向き合い続けた末に、それらはいつしか混ざり合い、やがては模倣不可能な「オリジナル」に至ったのだと。その道程こそが、加藤さんという人間が持つ説得力そのものなのだと。

※ななみ整骨院プロモーションムービー(撮影と編集を担当:三宅弘晃)
https://www.youtube.com/watch?v=97MPYXDO-Ko

三宅弘晃
キャリアコンサルタントカメラマン
キャリア心理学を応用し、その人の魅力あふれるポートレート撮影を行なっております。活動テーマは「モヤモヤを、イキイキに。」

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