「Lifeの3層」と身体性から見たマインドフルネス -小笠原和葉-
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「Lifeの3層」と身体性から見たマインドフルネス -小笠原和葉-

今、午後のセッションを終わったところでこれを書いています。
ボディーワークのセッションをしていると、最初は「社会的な顔」でセッションルームに入って来られたクライアントさんが、セッションを終わったときに「ああ、この方はほんとうはこういう顔なのか」と思わされるような、リラックスして生き生きとしたその人らしさが現れた表情になるのを目撃することがよくあります。

その方の症状や既往歴や社会的属性を超えた、その方の「いのち」に触れている時間はわたしにとっても、いつも新しい視点をもたらしてくれるリッチな時間です。

改めまして、こんにちは。
ボディーワーカーの小笠原和葉です。

「心と身体は“つながっている”、というより“切り離せない一つのもの”」

というアイディアをベースにして、ボディーワークの施術をしたり、心と身体、あるいはそれをつなぐ神経システムのお話などをさせていただいたりしています。

■Lifeの3層

さて、このコラムを書くことを拝命して最初に思いついたのは、曹洞宗の僧侶である藤田一照さんの元で3年ほど学ばせていただいている「無心のマインドフルネス研究会」で伺ったお話でした。この時わたしが取ったメモをシェアさせていただきますね。

私たちのLifeには3層ある。
・生活 wealth
・人生 meaning
・いのち LIFE

最初の2つはsomebodyのもので、最後の一つはno-body、つまり個人名がないもの。ゆたかな生活を目指して、人生を貧しくしていないか?

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生活の層はサバイバルモードの恐怖と欲望の世界。
個人という幻想を捨ててから始まる人生がある。
いのちから見ない限りわたしたちは本当には安らげない。
苦しみたかったら、どんどんモノの世界にとらわれていればOK。
でもその世界から、砂場から子どもが去るように、納得して離れていく。
それにマインドフルネスが使えるのだが、むしろその砂場にとどまるためにマインドフルネスを使うことを、あなたは選ぶか??

なかなかに強烈なメッセージだと思いませんか。
そして同時に思いました。

わたしがボディーワークや心理療法の時間を通して感じる言葉にできない豊かさは、「いのちから見る」というその視点の感覚をクライアントともに味わっていたということなのかも知れないと。

わたしが行っている施術は、診断・介入は最小限にとどめ、クライアントの状態をただあるがままに触れ、刻々と固有の健康に向かって動いていく生命の流れについていくという態度でワークすることが特徴です。

その知覚がまさに「マインドフルネス」と呼ばれる状態であることを知ったのは、20年近くになる施術歴において実は最近のこと。

日常では様々なことに好奇心と意識が散りっぱなしで落ち着きとは無縁な私ですが^^;   セッションの時間を持つことで、意識をさまよわせずやわらかく留めること、今この瞬間をあるがままに感じることをトレーニングしていたようです。

介入より観察と「待ち」の時間が長いワークをここまで続けてこられたのは、セッションを通していのちをただ感じていたマインドフルな時間の恩恵なのだと感じていますし、マインドフルな態度でいのちを見つめられたとき、クライアントに本質的な変化がもたらされるのです。

■マインドフルネスの恩恵と身体性

すでにマインドフルネスを継続的に実践なさっているみなさんは、どんな変化や効果を感じておられるのでしょうか。あるいは、どんな目的で継続されているのでしょうか。

「マインド」というからには、マインドフルであるということはマインドの状態を指すように感じますが、実はそこにはかなり身体性を伴っています。

マインドフルな感覚になるためには、身体がマインドフルな感覚が生まれる生理状態になっていく必要があります。つまりマインドを整えていく過程で、同時に身体も整えているわけです。

生理学的には、交感神経が過剰に活性しがちな私たちの神経系をなだめ、ポリヴェーガル理論(※)の言うところの「一人のリラックスの感覚」である、背側迷走神経複合体(副交感神経の一部)の働きを高めることで自律神経システムを、ひいては心と身体を整える、という効果があります。このことにより日常の心身の安定の基盤が育ちます。

マインドフルネスの効果については科学的視点で様々なエビデンスが出されていますが、実感としてはこの「自律神経システムの安定」ということがさまざまな可能性の土台となっていると感じています。

先程のLifeの3層の話に戻ってみますと、マインドフルネスの効果もこの3層にわたって起こっているのではないでしょうか。

Googleが取り入れた事によってビジネス界に広がった、いわゆる「第2世代のマインドフルネス」(※2)はその恩恵として、例えば生産性や集中力のように「生活」レイヤーでのメリットが謳われることが多いように思いますが、継続するうちにそのもっと奥にある「人生」や「いのち」のレイヤーに起こるAwareに価値を見いだされている方も多いのではないでしょうか。

呼吸や身体感覚などの「いまここ」にしかないものに意識を向けたり、心地よく落ち着いた姿勢を保ちながら時間をすごすことによって、「いかに社会でうまくいきていくかということに意識を使っていたわたし」、つまり「生活」のレイヤーで悪戦苦闘していたわたしから視座が深まり、「人生」や、役割や属性が解体された「いのち」のレイヤーのわたしの中に安らいでいきます。

身体を、自分のアタマに従属させるものとしてトレーニングするのではなく、その中に安らいでいく座として共にいること。
それは左脳偏重の現代社会に生きるわれわれにとって、リラクゼーション・リフレッシュ以上の意味があります。
身体性の回復ということも、マインドフルネスの大きな恩恵の一つです。

私たちは子どもの頃から「身体の外で、いかにうまく生きていくか」ということばかりを学んでくる。
「身体のなかで」生きている自分と出会わせてあげるのがボディーワーカーとしての仕事だ。

これはわたしのボディーワークの師匠の一人である、ジャック・ブラックバーン先生の言葉です。

身体のなかで生きている自分とは、つまり名前や社会的役割を超えた「生き生きとしたいのち」としての自分なのではないでしょうか。

わたし自身も、改めて「座ろうかな」、と思うときは、ストレスややらなければいけないことがいっぱい!で気持ちが落ち着かないときであったりします。「生活」や「人生」のレイヤーでも様々な効果と恩恵を味わっています。

けれど静かに座って身体とともにあり、今ここを感じることによって「生活」や「人生」がよりスムーズになるだけでなく、「いのち」としての自分を味わっているのだということにも、できるだけ意識的でいたいなと思うのです。

■いのちから見ない限りわたしたちはほんとうには安らげない

いのちから離れて、生活をよくしようと悪戦苦闘することもまた、この地球を生きるという壮大なゲームの味わいであり楽しくもバカバカしくも愛しくもある、最高のエンタメです。
でも時には「ただいのちとしての自分」を味わう時間を持つことが、その中で飲み込まれずよりよく味わう秘訣なのかもしれません。

なんだかよく分からなかった2020年も、なんだかよく分からないまま終わろうとしています。

2019年以前とは、少し違ったクリスマスに向かっていくこの12月。
しずかに、呼吸や身体を感じながら、「いのちとしての自分」というシンプルな感覚をみんなで味わう時間を持つことができたら、来たるべき2021年をより生き生きとして迎えることが出来るかもしれません。

(※1)イリノイ大学のスティーブン・ポージェス博士が提唱した新しい神経理論。自律神経は交感神経・副交感神経の2系統の拮抗ではなく、3つのサブシステムの協働であるという説。

(※2)参考:〔論 文〕 「第 2 世代マインドフルネス」の出現と今後の展望* -社会正義の価値に資する「関係性」への視座を踏まえて- (池埜 聡、内 田 範 子)https://www.kwansei.ac.jp/cms/kwansei_s_hws/pdf/HumanWelfare12/%E6%B1%A0%E5%9F%9C%E8%81%A1.pdf?fbclid=IwAR3IZZrAIkx-dZY4h-1kEo29LwlACueeGtUEVjnUtVxXCluqPam5nJ2mLSE

◆プロフィール
小笠原和葉
ボディーワーカー
一般社団法人 OurDynamics 代表理事
WEBメディア『Magellan』編集長

大学院で宇宙物理学を専攻後、SEとして国内大手ITベンダーに就職。その後、自身の健康への問題意識をきっかけに、フィジカルとメンタルとの関係性に着目、研究を始める。
人間全体をひとつのシステムとしてとらえ、より良く生きる生きるための身体性や生理学について 個人から企業までそれぞれのニーズに合った形で幅広く教育・啓蒙を行いながら、代替医療から現代医学まで幅広く学術・臨床研究を深め新しい健康観「健康3.0」を探求している。

・著書
 「理系ボディーワーカーが教える"安心" システム感情片付け術」(日貿出版社)
・メディア掲載に「anan」「PHPらくーる」他多数、がある。
 趣昧はフィギュアスケート鑑賞。一児の母。

力リフォル二ア州認定マッサージプラクティショナー
クラ二オセイクラル・プラクティショナー(CHA)アシスタント・チューター
ソマティック・エクスペリエンス(Somatic Experiencing®)認定プラクティショナー
宇宙物理学修士
東北大学医学部大学院研究生

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