日本は四季折々の自然が楽しめる一方で、地震や水害などの災害も決して他人ごとでは無いですよね。「備えあれば憂いなし。」という言葉がありますが、物品や食糧を準備することと同じように、マインドの備えもしておきたいものです。
今回は、災害時に注意したい「無意識の思い込み=アンコンシャスバイアス」について解説しながら、災害に備えるマインドづくりについてお伝えしていきたいと思います。
アンコンシャスバイアスとは
ではアンコンシャスバイアスとは何か、から見ていきましょう。
アンコンシャスバイアスとは、「無意識のうちに“こうだ”と思う」こと。日常にあふれていて、誰にでもあるものです。
日本語では、「無意識の思い込み」「無意識バイアス」「無意識の偏見」など、様々に表現されています。
(一般社団法人アンコンシャスバイアス研究所 ホームページより)
脳は膨大な情報を受け取って、処理することが求められる臓器です。
それを少しでも省エネにするため、自分にとって重要な情報だけを受け取ったり、思考・判断を自動化するためのしくみが、アンコンシャスバイアスです。過去の経験や周囲の意見、日々接する情報から形成されます。
誰もが持っているもので、それ自体が悪いものではありません。むしろ、なければ脳がパンクしてしまいます。
しかし、自分のアンコンシャスバイアスに無自覚でいると、事実からの解釈が偏ったものとなってしまい、災害時には取り返しのつかないことになってしまうこともあり得ます。
災害時に特に注意したい3つのアンコンシャスバイアス
それでは具体的に、災害時に備えて知っておきたい、アンコンシャスバイアス3つをご紹介します。
1.正常性バイアス
危機的な状況が迫っていたり、周りが変化していたりしても、「私は大丈夫」、と自分の都合の良いように思い込んでしまうこと。周りの状況を過小評価したり、自分を過信したりしまうことで、備えを怠る、逃げ遅れる、などの可能性が生じます。
こんな人は注意 ▶︎
・「うちは大丈夫」と根拠なく思うことがある
・周りで問題が起こっても「私は大丈夫」と思ったことがある
・警報が鳴っても、逃げようと思わない
起こりうる危険の例 ▶︎
避難警報が出ていても、「今まで大丈夫だったし、私にはそんなことが起こらないだろう」とのほほんと過ごしているうちに逃げ遅れた。
2.確証バイアス
自分にとって都合の良い情報ばかりを集めてしまうこと。人は自分が常識だと思っていること、すでに持っている先入観や仮説を肯定したいものです。そのため、自分の考えを肯定する情報ばかりに目がいって、無意識に「自分は正しい」と思い込んでしまいます。
こんな人は注意 ▶︎
・自分の考えを裏付ける情報が一つでもあれば「やっぱりそうだよね!」と思ってしまう
・自分が信じていることを疑わない
・事実を自分の都合よく解釈してしまう
起こりうる危険の例 ▶︎
最新情報では「この地域は危険だ」と言われているのに、「安全だ」とされてきた過去の情報ばかりを見て「やっぱりそうだよね」と安心して、備えを怠ってしまう。
3.集団同調整バイアス
周りと同じように行動してしまうこと。周りと同じなら安心だ、と思考停止になり、間違っていることに気づかず、危険な行動をしてしまう可能性があります。
こんな人は注意 ▶︎
・「皆がいいと言っている」という言葉に弱い
・他の人もやっているし、私もいいだろう、と思ったことがある
・少数派になる不安があり、NOと言えない
起こりうる危険の例 ▶︎
「皆が行っているから安心だろう」と推奨された避難経路では無いところを利用し被害にあってしまう。
アンコンシャスバイアスに気づくために
上記の他にも、権威性バイアス(有名な人、権威ある人の言葉をつい信じてしまう)、サンクコストバイアス(これまで費やしてきた時間・労力・お金などを無駄にしたく無い、という思いから行動パターンを変えられない)など、様々なアンコンシャスバイアスがあります。
災害時は焦りや自分を安心させたい気持ちが働いて、盲目的になりがちなので、特に注意が必要です。
では、このアンコンシャスバイアスをどう対処したら良いのでしょうか?
それにはまず、自分にはアンコンシャスバイアスがあると知ること。知ることで、「あれ?私、今の考えはバイアスがかかっているかも。」と気づいて、冷静に事実や情報を見る意識ができますね。
ということで、この記事を読んでくださっている方は、第一ステップはクリアです。
また、普段から鍛えておきたいのは、自分の思考をメタ認知する力です。「私はAという事象から、Bを連想して、こんなふうに思考をしていったな」と事実や自分の思考プロセスを客観的に見ることができると、アンコンシャスバイアスにも気づきやすくなります。それには、やはりマインドフルネスが有効です。瞑想などで、自分の意識を意識する、ことで鍛えていくことができます。また、不安な気持ちを落ち着ける方法としても、備えておきたいものです。
そして、まさに災害時というときにはこの問いを持っておきましょう。
「本当にそうですか?」
不必要に不安になる必要はありませんが、自分が冷静な判断ではなく、アンコンシャスバイアスに動かされていないか、を確認しながら行動しましょう。
いかがでしたか?災害時は、どんなに備えていても物理的なことには限界があります。一方で、思考は常にあなたと一緒にいてくれます。
平常時に、自分の思考癖に気づいたり、メタ認知力を鍛えたりと、備えておくことをオススメします。
(文:松元絢)