「やらなきゃいけないのに、どうしても動けない…」
そんな“面倒くさい”感覚の裏側には、実は脳の予算管理システムが関わっています。
それを克服するためにも、マインドフルネスが有効、というお話をしたいと思います。
音声で聞きたい方はこちら(Voicy)
今回は、統計学で人気のYouTuber・サトマイさんの「面倒くさいの正体」という動画をヒントに、
面倒くさいの解消法をマインドフルネスの視点からお伝えします。
「面倒くさい」の正体は“アロスタシス負荷”
脳は常に「未来の変化」に備えてリソース配分している
脳が未来の変化に備えてエネルギー(予算)の配分を調整している状態のことを、アロスタシスと言います。
小さな出来事であっても、脳は「次に何が起こる?」「どれだけエネルギーが必要?」と予測を続けながらリソース管理をしています。
この予測が過剰になると、
・電話の音でビクッとする
・上司と話す前から緊張する
・気が散って集中できない
・まだ行動していないのに体が重い
といった “面倒くさいモード” が発生します。
つまり、面倒くさい=怠け心ではなく、脳と身体の“予算管理のエラー”なのです。
アロスタシス負荷のタイプは2種類「繊細さん」「鈍感さん」
アロスタシス負荷が高まる背景には、大きく2つのタイプがあります。
刺激を拾いすぎる「繊細さんタイプ」
まず、外界の刺激を必要以上にキャッチするため、脳の予測システムが常にフル稼働してしまうタイプ。
俗に言う、「繊細さん」タイプです。
特徴
・小さな刺激に反応しすぎる
・緊張が抜けない
・疲れやすい
・身体のセンサーが高感度
必要なのは「外の世界と安全につながる」こと
繊細さんタイプは外界との“健やかな外部とのつながり”が回復ポイントです。
おすすめの実践例
・グラウンディング(足裏で地面を感じる)
・自然への暴露(風・太陽の光・木の匂いなどを味わう)
・グルーミング(スキンケア、ヘッドスパ、マッサージなど)
身体の声に気づきにくい「鈍感さんタイプ」
身体で起きている変化に気づけないまま、負荷を溜めて“見逃してしまうタイプ”です。
特徴
・ストレスを溜めても気づきにくい
・心身の変化を感じにくい
・男性に多い傾向
・外側への注意が強い
必要なのは「内側に注意を戻す」こと
鈍感さんタイプには身体の内側に意識を向け、内受容感覚を鍛える練習が有効です。
おすすめの実践例
・呼吸瞑想(微細な呼吸の変化を感じる、など)
・冷温刺激(サウナ・交代浴で心拍や血流の変化を感じる、など)
・リズム運動(歩く・ゆっくり咀嚼するなど)
・身体感覚の言語化(ジャーナリングをする、など)
マインドフルネスのサマタ瞑想とヴィパッサナー瞑想との関係性
上記の実践例を見ていると、マインドフルネスの瞑想や応用と同じではないか、と気づく方も多いはず。
そうです、マインドフルネスの実践は、面倒くさいの解消にもつながっていく、ということですね。
では、どんなマインドフルネスを選ぼうか?と、マインドフルネス側の視点から整理してみたいと思います。
マインドフルネスには、以下の2つの代表的な瞑想があります。
(関連して、コンパッションがあります。)
サマタ瞑想(集中の瞑想)
一点に注意を置き、心を安定させる瞑想。呼吸、ろうそくの炎、身体の一点などに集中します。
ヴィパッサナー瞑想(観察の瞑想)
今この瞬間に起きている感情・思考・身体感覚を、評価せず、流れるままに観察する瞑想です。
これにより、思考のクセや感情のパターンに気づく「気づきの筋肉」が育ちます。

実際には、2つは明確に分かれるものではありません。
呼吸瞑想の中で一点に集中していても、雑念が湧いた瞬間に観察する力が立ち上がります。
主目的をどこに置くか、で分けるという方がわかりやすいかもしれません。
この「集中」と「観察」の使い分けが、繊細さん・鈍感さんの整え方と自然につながっていきます。
定番の鼻呼吸瞑想を、タイプ別に実践するとしたら?
それでも、新たな手法を加えたり、時々で変更したり、ということにハードルを感じる方もいるでしょう。
その場合提案したいのが、マインドフルネスで定番の鼻呼吸の瞑想を、タイプ別にしてみるということです。
そうすると、同じ鼻呼吸瞑想でも、自分が今、どちらに偏っているかで、変えてみたり、自分が苦手とする方を試したりできるので、実践のハードルが下がるのではと思います。
繊細さんタイプは、ヴィパッサナー瞑想を意識する
集中の対象を、“研ぎ澄ました一点”に縛らず、呼吸によって起きる身体の広がり・縮みや、呼吸をしながら床に接着している足などの感覚を大きな範囲で感じる瞑想が向いています。
雑念が浮かんでも、評価判断をせず、意味づけをしないことが大切です。
鈍感さんタイプは、サマタ瞑想を意識する
内受容感覚を高めるために、鼻の奥の空気、胸の奥の動き、心拍のリズムなど、身体内部の “1点” を丁寧に感じる瞑想が有効です。
最初は難しい場合もありますが、神経の再接続を促すリハビリのようなイメージで取り組んでみてください。
面倒くささは“脳の賢いサイン”
面倒くさいと感じるとき、自分を責める必要はありません。
それはアロスタシス負荷、つまり脳と身体の予算管理が乱れているだけです。
タイプに応じてマインドフルネスの手法を使い分けることで、面倒くささの根本にやさしくアプローチできます。
今日の気分や自分の得意・不得意に合わせて、あなたに合う瞑想法を取り入れてみてください。






