なぜショート動画はやめられない?”刺激の幸せ”に潜む危険と、マインドフルネスで取り戻す”安心の幸せ”

気づけば指が勝手にスクロールしていて、「もうやめよう」と思っても止まらない。
そんな経験はありませんか?これはあなたの意思が弱いわけではありません。

ショート動画は、脳が本能的に欲しがる“刺激の幸せ”を生み出すよう精密に設計されており、次の動画へ「次は何が出てくるんだろう?」と追い求める脳内物質であるドーパミンが止まらなくなる仕組みがあります。
だから流されてしまうのは、ある意味当然と言えます。

しかし、この刺激中心の幸福には、集中力の低下や幸福度の減少など、気づきにくい危険も潜んでいます。
そこで今、私たちが取り戻したいのが、マインドフルネスが育てる“安心じんわり系の幸せ”。
静かで落ち着く本来の幸福を、脳科学とともに紐解いていきます。

もくじ

なぜショート動画はやめられないのか、“刺激の幸せ”に潜む危険

私たちがショート動画が止まらなくなるのは、なぜなのでしょうか?
そして、その結果どんな危険が考えられるのでしょうか?

“次は何が出てくる?”のワクワクの期待が連鎖し、さらに強い刺激を求めるように

ドイツのボン大学の研究チームは、SNSのような“次々と新しい刺激が入ってくる環境”が、脳の報酬系を強く刺激し、次の情報への期待(ワクワク)を増幅させることを明らかにしています。

ドイツのシャリテ医科大学の研究では、短く刺激の強いコンテンツを繰り返し見るほど、脳が即時の快楽を求めやすくなり、やめにくい状態が作られることが示されています。

ワクワクを期待するドーパミンは“快楽そのもの”ではなく、“追い求める欲求”を生む物質
刺激が強いほど、脳は「もっと欲しい」と求め続けます。

注意力を奪い、脳の司令塔が疲れる

中国の浙江大学によるTikTok研究では、ショート動画を長く見るほど、集中力や判断力を担う 前頭前野の働きが低下 することが報告されています。
そして、前頭前野が疲れることで、
・やる気が出にくい
・判断が鈍る
・注意が散りやすい
といった状態になりやすくなってしまいます。

幸福度はむしろ下がる可能性も

アメリカ・ペンシルベニア大学の心理学研究では、SNSを習慣的にスクロールする生活が、
不安・孤独感の増加 と関連しており、長期的な幸福度は低下することが示されています。

では、ショート動画をやめるにはどうすればいい?

ショート動画の衝動は、意志の力だけでは止められません。
大切なのは、脳の仕組みに沿った方法を使うことです。

① 5秒の深呼吸で脳の興奮を落とす(神経科学的アプローチ)

呼吸がゆっくりになると、迷走神経が働き、副交感神経が優位に。脳が興奮状態から抜け、衝動が弱まります。

② 「今本当に見たい?」と自問して前頭前野を働かせる(認知神経科学的アプローチ)

自分に問いかけるだけで、判断を司る前頭前野が作動し、ドーパミンに引っ張られた“自動行動”が止まりやすくなります。

③ すぐ開けないように“摩擦”をつくる(神経科学+行動科学のアプローチ)

アプリを2ページ目に移動するなど、小さな摩擦を入れるだけで、衝動を生むドーパミン反応が弱まりやすいことが知られています。
他には、ホーム画面からアプリを消す、視聴時間をアプリ内で制限する、スマホの表示を白黒にする、などの工夫ができます。

④手帳を習慣にして、他のことの優先度を上げる(編集長あやぱんオススメのアプローチ)


これは、この記事を書いているMindful.jpあやぱんのおすすめの方法です。
まず、手書きの手帳を使い、一日の途中で、できるだけタスクやスケジュールの確認などでスマホを開く必要を無くします。
そして、自分の価値観に基づいたやるべきことを明確にし、それに向けたスケジュールを手帳で組みます。
そうすると、思っていた以上に時間がない、ということに気づき、自然と優先度が変わり、ショート動画は本当に「今見る!」と決めた時だけしか見なくなりました。

刺激モードからの回復にも、マインドフルネスを

ショート動画を“今すぐやめる”ことも、“そもそも求めなくなる”ことも、マインドフルネスは両方を助けてくれます。その理由を、脳科学の観点から3つの時間軸で整理してみます。

【短期】衝動を静める“ブレーキ”が働く

深呼吸や「今この瞬間」に意識を向ける行為は、迷走神経を活性化し、脳の興奮を静める働きがあります。また、“気づく”ことで前頭前野が作動し、ドーパミンが生み出す衝動的な反応が弱まります。

そのため「今すぐ見たい!」という焦りや衝動がすっと落ちるという短期的な効果が起こります。

【中期】刺激がなくても満たされる脳になる

マインドフルネスを続けると、脳内では

  • セロトニン:落ち着き・安定
  • オキシトシン:つながり・安心
  • エンドルフィン:静かな満足感

といった“安心のホルモン”が出やすい状態になります。

これらは「刺激で得る快感(ドーパミン)」とは正反対の性質を持つため、中期的に次の変化が起こります。

  • 刺激がなくても、今が十分心地よいと感じられる
  • 「もっと見たい」という渇望が自然と弱まる
  • 満たされているから、過剰なスクロールをしなくなる

つまり、外側の刺激を追い続けなくても満ちていられる“どっしりした幸せ”が戻ってくるということです。

【長期】脳の構造レベルで“刺激に強くなる”

継続的な瞑想では、

  • 扁桃体(不安・衝動の発生源)の反応が弱まる
  • 前頭前野(判断力・注意力の中枢)が強くなる

という構造的変化が、多くの脳科学研究で確認されています。

そのため長期的には、

  • 刺激に引っ張られにくい脳
  • 衝動に流されない脳
  • 幸福の“基礎体力”がある脳

へと変わっていきます。

まとめ:速さと刺激の時代に、じんわり続く幸せを選ぶ

ショート動画は楽しいけれど、脳は刺激に弱く、“もっと見たい”のスイッチが入りやすい仕組みがあります。

だからこそ、刺激の幸せではなく、安心の幸せを意識的に選ぶ、選べるように鍛えていくこと が必要です。
流されるのではなく、意図を持って時間を過ごす、そのためにもマインドフルネスを実践していきましょう。

もくじ