私たちの日常には、たくさんの「休む瞬間」があります。
ベッドに横になる時間、ソファでぼんやりする時間、スマホをスクロールする時間。
けれど、同じ “休む” という行為でも、
「だらだら」と「のんびり」では、心の回復度がまったく違うことをご存じでしょうか。
この記事では、マインドフルネス・心理学・脳科学の観点から、
“本当に休める休み方” について解説します。
「だらだら」と「のんびり」は、何が違うのか
まず整理しておきたいのは、この2つの決定的な違いです。
●だらだら
なんとなくスマホを触って、気づいたら30分。
動画をつけっぱなしにして、夕方になり「今日もだらだらしちゃった…」と後悔が残る。
●のんびり
「今からのんびりしよう」と決めて、お茶を淹れたり、本を読む。
前から観たかった映画を観る、散歩に出る。
自分で選んだ満足感と、深いリフレッシュ感がある。
この違いを生んでいるのは、行為そのものではありません。
ポイントはただ一つ。
キーワードは「意図(intention)」です。
休息の質を決めるのは、行為ではなく“意図を持ったかどうか”
同じ「休む」という行為でも、その時間が心や脳の回復、リフレッシュ、充実感につながるかどうかは、何をしたか ではなく、最初に“意図を持ったかどうか” によって変わります。
ハーバード大学の心理学者エレン・ランガーは、意図を持って行動を始めることが「主体性(agency)を高め、行動の満足度を引き上げる」と述べています。
たとえば、「これからのんびりしよう」と一度でも自分の内側で決めてからとる休息は、脳も心もそれを“選んだ時間”として受け取り、豊かさや満足感を感じやすくなります。
一方、意図を持たずに流れるように始まってしまった休息は、たとえ同じ行為であっても、「なんとなく過ぎてしまった」という感覚を残し、後悔や疲労感につながりやすくなります。
つまり、休息の質を決めているのは行為そのものではなく、
“私は今、意図を持ってこの時間を始めたか?”
ほんの数秒、意図をそっと置いてから休むだけで、その時間は“流される時間”から“満たされる時間”へと変わります。
また、意図を持ったか、を言い換えると、「のんびり」を選んだか?ということになります。
行動経済学者 ダン・アリエリー は、人間は「自分で選んだ時間」をより豊かで意義のあるものとして記憶しやすいと語っています。
同じ1時間でも、
- なんとなく消えた1時間
- 意図して作った1時間
では、幸福度に大きな差が出るのです。
心理学が示す、“いい休息”と“悪い休息”
心理学には、ストレス対処法を意味するコーピング(coping) という概念があります。
大きく分けると、
- 問題焦点型コーピング
- 情動焦点型コーピング
- 意図的リラクゼーション(効果が高い)
- 回避的コーピング(後悔が残りやすい)
があります。
この分類に落とし込むと、
- のんびり=意図的リラクゼーション(良い回復)
- だらだら=回避的コーピング(疲労の先延ばし)
となります。
回避的コーピングは、一時はラクでも、後で「また時間をムダにしてしまった」と、自分への信頼感を下げてしまいがちです。
脳科学の視点で“回復スイッチ”が入る休み方とは?
脳には「デフォルト・モード・ネットワーク(DMN)」という、ぼーっとしている時に働く休息回路があります。
ここが活性化すると、
- ひらめきが生まれる
- 感情が落ち着く
- 自己理解が深まる
- 疲労が回復する
など、心身に良い変化が起こります。
しかし、SNSや動画の“だらだら消費”は、
脳に常に新しい刺激を送り続けるため、DMNが働けません。
●だらだらスマホ
→ 刺激過多
→ 脳が休めない
→ 疲れが蓄積する
●のんびり
→ 刺激が少なく、意図が明確
→ DMNが働きやすい
→ 脳が深く回復する
“だらだらしたのに疲れている” のは、脳の仕組みから見ると、とても自然なことなのです。
のんびりを選ぶために必要なのは「ストック」
では、どうすれば“のんびり”を日常で選べるのでしょうか。答えはシンプルです。
自分が「のんびりしたな〜」と感じられる行為のストックを持っておくこと。
人は疲れていると、判断力が落ち、その場の刺激(スマホ・動画)に流されやすくなります。だからこそ、あらかじめ引き出しを用意しておく。
たとえば、
- マインドフルネス瞑想をする
- お気に入りのお茶を丁寧に淹れる
- 太陽の光を浴びながら散歩する
- ハンドマッサージをする
- 本を5分だけ読む
- ラジオや音楽を流す
- 部屋の空気を入れ替える
- 深い呼吸を3回する
こうした“小さな意図的なのんびり”が、あなたの日常を支える力になります。
休み方の質が、人生の質を決める
だらだらは、流されてしまった時間。
のんびりは、自分で選んだ時間。
ゆっくり過ごすとき”何をして過ごすか”よりも、その行為に“意図”があるかどうかで、あなたの心の回復度、充実感は大きく変わります。
時間のある休日や、不意にできた細切れ時間。
「これからのんびりしよう」と意図してみることで、時間の質は驚くほど変わります。
どうか、自分に優しい“のんびり”を選んでみてください。
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